勤務先や外出先などにおいて、地震などの自然災害に遭遇し自宅への帰還が困難になった場合、私たちは「帰宅困難者」となります。
そうなった場合、私たちをスムーズに誘導し安全を確保するために様々な商業施設や複合施設が対応してくれます。
今回は、三宮駅周辺での災害時に備えた施設向けの避難訓練を取材させていただきました。
神戸市により開催されたこの訓練は、災害時に発生する課題を解決するために警備会社と連携しながら行われました。帰宅困難者の誘導で警備会社と協定を締結したのは全国で初めてになります。
訓練は、帰宅困難者が最も多く出ると予想される午後3時に大阪北部地震が発生したという想定のもと行われました。
各組織と円滑な連携をとるために、情報共有システム及び災害対応工程管理システムBOSS(※1)が活用されました。
これらを用いて被害状況、避難経路、支援要請、交通状況などの情報共有、そして一時滞在施設の開設依頼・応諾が行われました。
(※1)BOSai System / Business Operation Support System
【訓練の流れ】
①鉄道の運行停止
②帰宅困難者の発生
③みなとのもり公園への誘導
④一時滞在施設の開設
⑤鉄道の運行再開
⑥一時滞在施設の閉鎖
私たち帰宅困難者が発生すると、まず警備会社アルソックにより「みなとのもり公園」へ誘導されます。
そこで市から帰宅困難者カードを振り分けられ、”一時滞在施設の案内票”が配布されます。
ここで高齢者や要介護者、女性専用、子供連れなどの配慮内容によって案内先が振り分けられます。
帰宅困難者は、一時滞在施設の案内票に書かれた施設に向かい、配布された票を受付に提示します。
そこで受付から施設の利用同意書を受け取り、(家族や友達など同行者がいた場合は代表者のみ)書類に必要事項を記入します。
この利用同意書の提出と引き換えに、先ほどの一時滞在施設の案内票を受け取ります。
これは災害が落ち着いた後、施設の退所時に回収となるため大切に保管しましょう。
回収された案内票は、受付により”一時滞在施設案内票”と”利用同意書”の管理番号を突合し、退所人数の管理に用いられます。
全員が退所したら、利用同意書は施設から神戸市に提出となります。
このようにして様々な施設が臨機応変に対応することにより、私たちの安全が確保されています。
ホテルや教会、ホールなど12もの施設が一時滞在施設として訓練に参加されました。
(ちなみに神戸市では23施設が一時滞在施設として協力してくれています。)
そこで今回の訓練内容をふまえて、この利用同意書を災害時に活用すべきか?ということが最終議題に上がりました。
ほとんどの施設が賛成するなか、2つの意見が出されました。
〇地下通路管理施設
「ほかの施設とは違い、あくまでも通路であるため災害時に押し寄せてくる帰宅困難者をきちんと受付できるか不安である。」
〇駅付近のショッピングモール
「災害前に館内にいるお客様は滞在すると思われる。また、駅からたくさんの人が流れてくると予想されるが、これらの入館拒否は難しいのではないか。」
このような意見をふまえて、オープンな施設に関しては導入しない方針となりました。
もちろん同意書があると施設側も管理しやすく混雑を避けられる上に、私たちも案内先の振り分けなど配慮してもらえるので安心です。
しかし、災害発生時の混乱が予想される場面で近くの避難所からの受け入れ拒否や、一度公園に案内されるリスクなどを考えるとシステム導入には一部対応が難しい場合もあるのではないかと感じました。
そのため、これらの意見は私たち帰宅困難者のことを考えるからこそ出された案なのだと、とても考えさせられました。
このような状況下で、あなたならどのように対応しますか?
Writer:ヤマトユカ/Osaka(https://www.instagram.com/no.38yes/?hl=ja )