そもそもこの地域はなぜ洪水被害はなぜ繰り返されていたのか?
まず大きな原因として、特徴的な地形が挙げられます。
現在の中川・綾瀬川流域は、利根川、江戸川、荒川といった 大きな河川に囲まれていることと、
他地域と比較し土地が低いため水を溜め込みやすい地形になっています。
土地の斜面が緩やかなため、河川の流下に時間がかかることも特徴とされます。
また、都市化が進む一方で、治水対策が整っていなかったため、
大雨のたびに浸水被害が繰り返されてきました。
そこで平成 5 年から工事が始まって、平成 18 年に完成した《首都圏外郭放水路》。
国道 16 号の地下約 50mに、
全長 6.3 kmの放水路が通っており、これは世界最大級の地下水路とされています。
洪水が起こった際、大落古利根川・倉松川・幸松川・中川等の河川の一部の水を 地下に取り込み、
江戸川に排水するための水路です。
首都圏外郭水路で地上と地下を繋げる
5 つの立坑の深さは約 70mであり、自由の女神がそのまま入ってしまう程で、 目が眩んでしまいそうな景色でした。
高いところが苦手な方は、足が竦んでしまうかもしれません。
今回取材させていただいた、
第 1 立坑は、それぞれの立坑から流れてきた水を調圧水槽へ送る役割を果たします。
上の写真は第 1 立坑の側面から見た調圧水槽の写真です。
東日本を中心とし、広範囲に大雨と被害をもたらした2019 年の台風 19 号で、
首都圏外郭水路の活躍ぶりが報道されたことは、 記憶に新しい方々も多いのではないでしょうか。
1 本 500 トンに及ぶ柱が無数に並ぶ調圧水槽は、
全長 177m、高さ 18m、幅 78mにも及びます。
地下水路から調圧水槽に一定量の水が流れ込むと、
江戸川へ排水が開始され、
その最大排水スピードは1 秒間で小中学校にある 25mプールの水がなくなる程であるそうです。
この施設の活躍により、被害をかなり低減することが出来ました。
この風貌から「地下神殿」とも呼ばれているそうで、
地下神殿は、2019 年に公開された映画『翔んで埼玉』の 撮影場所として使われたそうです。
そのほかにも、
ドラマやミュージックビデオなどでも多数使われているそうなので、
「どこかで見たかも?」と感じる方がいらっしゃるかもしれません。
また、見学の際には洪水疑似体験 AR アプリという 実際に調圧水槽に洪水が流入する様子を
AR(拡張現実)で体験することが可能です。
どんどん水が入ってくる様子が目に見えてわかり、
災害の時の緊迫感が伝わってきました。
多くの人々の知恵を交錯させ、
完成した世界最大級の放水路『首都圏外郭水路』は、
首都圏を洪水災害から守るのに大きな役割を果たしています。
人々の生命を守る「機能的」な働きと、
美しい「芸術性」が共存している地下神殿は
住民の生活に安心と安全を与えてくれています。
大雨発生数と地球温暖化には密接な関係があるかもしれないとされており、
今後地球温暖化が進むと、
大雨の発生数が増えることが予想されます。
このことから、水防対策施設は非常に重要になってきます。
社会的意義の取り組みと芸術性が存在し、
人 々の洪水対策への関心を引き起こさせる、興味深い施設でした。
首都圏外郭放水路は、一般向けに見学会を行っています。
事前予約制、有料で開催しています。
詳細及び予約は下記までお問い合わせください。
電話 048-747-0281
HP https://gaikaku.jp/